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【日曜に書く】論説委員・森田景史 聖火に宿る五輪の裏面史 - 産経ニュース

 競技人生を絶たれかねない傷を負い、なお五輪に執着する女子柔道選手がいた。その背中を大阪で追ったことがある。

 試合で不自然な向きに折れ曲がった右膝は、皮一枚で膝の上と下がつながるほどの深手だった。手術とリハビリを経て1年で青畳に戻り、けがから3年後の世界選手権で金メダルを手にしている。

 彼女はしかし、それを花道としなかった。「まだ本当の世界チャンピオンじゃないという思いがある。やっぱり出たい」。戦場を枕にする-と悲壮な覚悟を筆者に明かし、2008年の北京五輪を目指した。引退発表は、代表選考会の決勝で敗れた夜に行われた。

◆強力な磁場

 五輪には、そこに関わった人の身も心も引き寄せる強力な磁場がある。どんな犠牲を払うことも厭(いと)わせない、一種の狂気を帯びた磁力がある。

 元日の小紙で、中島茂という元文部官僚の物語を紹介した。昭和39(1964)年の東京五輪で、聖火をギリシャから日本に空輸した人、自身の左目と引き換えに聖火を守った人だ。

 空輸計画のあらましに触れておきたい。開幕2カ月前の8月半ばに日本を発(た)ち、ギリシャのオリンポスで太陽光から採った火を、約3週間かけて輸送機で運ぶ。その間、中東やアジアの11都市を中継し、各地で聖火リレーを行う。これらの行事万般を、数年前の計画段階から取り仕切っていたのが中島だった。

 輸送機が日本を発つ直前、左目には過労による重い疾病を患っていた。療養を迫る医者に、中島は首を横に振っている。

 「もう来れないといったら“オリンピックか目か”と、しかられましたがねェ。しょんないですワ」

 ノンフィクション『1964東京五輪聖火空輸作戦』(夫馬信一著、原書房)に記されているのは、湿り気のない中島の言葉だった。

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February 16, 2020 at 08:00AM
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