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作家・恩田陸 書くことは癖のようなもの 「メモ魔」の少女時代 小説、漫画、映画…ひたすらノートに記録(夕刊フジ) - Yahoo!ニュース

 心身ともにタフ、と見た。だから、繰り出される作品群はどれも、揺るぎない骨格を持つ美しい生き物のように変幻自在、かつ自由なのだ。

 エンターテインメント小説の旗手である。

 「ライバル? この分野では若手の作家がすごくがんばっていますね。だから私も書き続けることで一緒に闘い、みんなでさらに日本のエンタメ系作品のレベルを上げていきたいと思っています」と静かに語る。

 生命保険会社に勤める父と専業主婦の母、5つ上の兄との4人家族の中で暮らした。

 「父の仕事の関係で引っ越し続きでした。中学3年から高校3年まで過ごした水戸市が一番長いくらいで、茨城県観光大使を仰せつかっているのもそのご縁ではあるのですが…。それに兄と年が離れているせいか一人っ子みたいに育ち、ひどく人見知りだったこと。それ以外は、ごく普通の家庭の普通の子だったと思います」

 とはいえ、聞けば幼少期、作家になるべくして過ごした日々があった。

 一人遊びの中心は読書。そしてメモ魔。少女漫画や兄が好んだ少年漫画、小説まで片っ端から読みあさり、見た映画やテレビドラマなどの感想を、イラストも添えノートに記録。この頃のお気に入りは漫画「サイボーグ009」だったそうだ。

 豊富な読書体験はやがて「作家」への浮力を生み出した。

 「酒見賢一さんは20代なのに『後宮小説』で第1回ファンタジーノベル大賞を受賞された。酒見さんは私よりたった1歳上。そんなに若くても作家になれるんだとすごい衝撃を受けましたね。それで小さい頃から書きに書きためたものを、何度も手直しして応募したのが『六番目の小夜子』なんです」

 作品は第3回日本ファンタジーノベル大賞の最終候補に残り、作家デビューのきっかけとなった。

 ■「読書魔」の現在 年間300冊読破「昨夜は危機管理術の本でした」

 読書の習慣は超多忙な今でも変わらない。「昨夜は『地雷を踏むな』(田中優介)を読みましたよ。危機管理術の本です」という具合。小説だけでなくビジネス書まで年間300冊を読破する。

 現実と非現実が交差する物語は情緒的な文体とともに、本屋大賞を受賞する『夜のピクニック』などに結実、作家としての地位を確立する。一方で『ユージニア』など5作品が直木賞候補となったが、選考委員からは「これが小説と言えるのか」と酷評される一幕も。『蜜蜂と遠雷』が直木賞を獲得したのは、実に6度目の候補の末だった。

 「落選とか先生方の評はあんまり気にならなかったですね。候補になる度、とりあえず第一線にいると認めてもらえているんだと思えましたから。それにもう長年書き続けてきた末の直木賞受賞だったので、気持ちの上でも生活面もさほど変化はありませんでした。むしろ最初の本屋大賞受賞のときの方が印象に残っているぐらいです」

 新作『ドミノin上海』(KADOKAWA)では、スピード感あふれるハイテンションな筆致を採用、読む側を異次元空間へと引き込んでゆく。約20年前に著した『ドミノ』の続編で、舞台は東京から上海へと移った。が、ドミノ倒しのように人と動物が絡まり合い、じりじりと運命が変化していく様が活写される点は同じだ。新作には25人と3匹の動物たちが登場する。それにしてもこの数の登場人物を書き分けるのは容易ではなかっただろう。

 「確かに限界、大変でした。で、場面がどうしても動いてくれないときは(作中の)厳厳(ガンガン)を描き、彼がよく動いてくれたので、厳厳頼みで何とか切り抜けました」

 厳厳はアウトローで知恵もののパンダ。どんなピンチも切り抜け自由な生き方を貫く。

 「書くということは“癖”、のようなもの」

 さらりと言い切る口調に厳厳並み、いやそれ以上の底知れぬパワーを感じた。(ペン・冨安京子/カメラ・鴨川一也)

 □新刊『ドミノin上海』

 ■恩田陸(おんだ・りく) 作家。1964年10月25日、青森市生まれ、仙台市育ち。55歳。91年、『六番目の小夜子』が第3回日本ファンタジーノベル大賞の最終候補となり作家デビュー。2005年、『夜のピクニック』で第26回吉川英治文学新人賞、第2回本屋大賞。06年、『ユージニア』で第59回日本推理作家協会賞長編および連作短編集部門賞受賞。07年、『中庭の出来事』で第20回山本周五郎賞。17年、『蜜蜂と遠雷』で第156回直木三十五賞、2回目の本屋大賞(第14回)を受賞した。新刊『ドミノin上海』が話題。

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March 30, 2020 at 02:56PM
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