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読んでいるあいだは「すてきなわたし」|編集部日記|竹村優子 - gentosha.jp

3月16日
先週から見ているゲラを今日中に戻すために最後の確認。アルバイトの子に鉛筆に消しゴムをかけるお願いしてから出かける。

目黒で取材。その前に、予約していたポットコーヒーをスターバックスに取りに行ったら、予想以上に広い店舗で驚く。ランチタイムと重なったせいか行列も想像以上に長くて遅刻しそうになる。

夕方、会社に戻り、坂口孝則さんから届いている連載「古典にすべてが書かれている。」の記事を作る。今回は、カミュの『ペスト』。今回ほど、連載タイトル「古典にすべてが書かれている。』を実感したことはない。初動時の官僚の冷笑的な態度、薬局の棚から姿を消すモノ、罹患している知りながら街へ飛び出す男……。「これは2020年の出来事だろうか?」と繰り返し書く坂口さん。たしかにそう思いたくなる1947年の作品。ペストは終わった。新型コロナはどう終わるのだろうか。

 

3月17日
神保町の打ち合わせあとに寄った、東京堂書店に花森安治イラストの小物がたくさんあり、心ときめく。小学生のときから、母親が買う『暮しの手帖』が好きだった。いちばん熱心に読んでいたのは「すばらしき日曜日」と「エプロンメモ」、そして「すてきなあなたに」。

矢吹透さんの連載「美しい暮らし」は、「すてきなあなたに」を目標に始めたもの。最初にお会いしたときに盛り上がったのは、「すてきなあなたに」のどの話が好きだったか、という話題。私は、お客様が急にいらして、でもティーバッグしかなくて、えい!っと袋をやぶって茶葉を直接入れたら、案外いい香りが出てよかった、というのとか、薄焼きタマゴにマーマレードやバターを載せて食べるとおいしいおやつになるから、わざわざクレープ焼く必要ないとか、ぶどうパンはバターを塗ると特別に美味しい、とか。

食べ方の工夫、ブローチやスカーフを使った小さなおしゃれ、手紙を書いたり、メモを残したり、生活の細やかな断片にうっとりとした。それは今も変わらない。読んでいるあいだは、「すてきなわたしに」なれるからかもしれない。連載をまとめた書籍はコツコツを集めている。
 

3月18日
午前中の新幹線で大阪方面へ向かう。指定席の車両はガラガラ。新大阪から特急こうのとりに乗り換え、宝塚で打ち合わせ。
梅田に戻ってもうひとつ打ち合わせ。

大阪の夜の街も人が少ない気がするものの、立ち飲み系のお店はまあまあ混んでいた。

3月19日
昼前に、近松門左衛門「心中天網島」の網島で打ち合わせ。今回の新コロナのクラスターとなったライブハウスが近くにあるとのことで、打ち合わせ後に京橋駅に向かう途中に教えてもらう。けっこうな頻度で大阪に来ているものの、いまだ位置関係も交通網もよくわからない。

京阪線で京都に移動して、小さな書店をめぐる。誠光社と三月書房。三月書房は、まもなく閉まるというのでどうしても行ってみたかった。

phaさんの文庫『どこでもいいからどこかへ行きたい』に、「京都には世界の全てがあった」というエッセイが収録されているのだけど、京都で青春時代を過ごすとはどういう感じなのだろう? と想像する。そのエッセイのなかで、ヘミングウェイの「移動祝祭日」、

もしきみが幸運にも
青年時代にパリに住んだとすれば
きみが残りの人生をどこで過ごそうとも
それはきみについてまわる
なぜならパリは
移動祝祭日だからだ

の「パリ」がphaさんにとっては「京都」だと書かれている。私にとっては「東京」なのかもしれないけれど、東京では大きい気もする。
 

鴨川。春の始まりを感じる日だった


 

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March 22, 2020 at 02:00PM
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