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的川博士の銀河教室:的川博士の銀河教室 774 惑星系は美しいか?/2 - 毎日新聞

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太陽系にはティティウス・ボーデの法則

 前回は、奇跡的きせきてきに美しい並び方をしている惑星系わくせいけい紹介しょうかいしました。私たちが住んでいる太陽を中心とする惑星系(太陽系)には、このような「美しさ」はあるのでしょうか。

 太陽系の惑星は現在、八つあることが分かっていますが、昔は(太陽に近い順に)水星・金星・火星・木星・土星の五つの惑星で知られていました。これらがすべて実は太陽を中心に回っているという「地動説」が確立した16~17世紀には、(金星と火星の間にある)地球を加えた六つが惑星と考えられていました。

 1766年にドイツの天文学者ヨハン・ティティウス(1729~96年、図1)が、これら六つの惑星の公転半径(太陽からの距離きょり)に「美しい」関係が存在することを見つけました。「0、3、6、12、48、96という規則性のある数字を並べて書き、それぞれに4を加え、10で割ると、太陽から各惑星までの距離が出る」というのです。式で表すと、

2n×3+4/10 というもの。2nは、2をn回かけるのです。この式による計算値Rcと、それぞれの惑星の公転半径の観測値Roを表に示しました。赤字が当時知られていた六つの惑星についてのものです。RoとRcは、ほぼ一致いっちしていますね。Roは公転半径を天文単位(AU)で表したものです。AUとは、地球の公転半径(約1億5000万キロメートル)を1とした時の距離です。一つの式で表せるのです。「美しい」と言えるのではないでしょうか。

 この式は、72年にドイツの天文学者ヨハン・ボーデ(1747~1826年、図1)が紹介してから有名になったので、その後「ティティウス・ボーデの法則」と呼ばれるようになりました。ただし、六つの惑星がなぜこんなに「美しい」かたちで軌道きどうに配置されているのかは分からないため、「この並び方は単なる偶然ぐうぜんだろう」とも言われていました。

 また、この式のn=3(規則性のある数字の並びで欠けていた「24」)に相当する惑星が見つかっていないという問題もありました。ところが、1781年にイギリスの天文学者ウィリアム・ハーシェル(1738~1822年)によって発見された7番目の惑星(天王星と命名)の観測値Roが、n=6の場合の計算値Rcとほぼ合っていた(表)ため、火星と木星の間にn=3に相当する未知の惑星があるのではないかと考え、積極的に探し始めました。

 そして1801年、n=3に相当する距離に比較的ひかくてき大きな天体(ケレスと命名)が発見され、その軌道全体に小さな天体が次々つぎつぎと見つかって「小惑星しょうわくせい」と呼ばれるようになりました。こうしてけていたn=3もまったため、ティティウス・ボーデの法則の信用度が一気に増しました。

 しかし、46年に発見された海王星の観測値Roは、n=7に対応する計算値Rcとは全く合わず、そのRcは、むしろその後に見つかった、より太陽から遠い冥王星めいおうせい(2006年までは惑星、それ以降は準惑星じゅんわくせい)のRoに近かった(表)ため、現在では、この法則は偶然ぐうぜん産物さんぶつであると考えられています。それでも私たちの住んでいる太陽系の惑星たち(図2)は、比較的「美しい」配置を持っていると言えそうですが、いかがですか。(つづく)


的川泰宣まとがわやすのりさん

 長らく日本の宇宙開発の最前線で活躍かつやくしてきた「宇宙博士」。現在は宇宙航空研究開発機構(JAXA)の名誉めいよ教授。1942年生まれ。


日本宇宙少年団(YAC)

 年齢・性別問わず、宇宙に興味があればだれでも団員になれます。 http://www.yac-j.or.jp


 「的川博士の銀河教室」は、宇宙開発の歴史や宇宙に関する最新ニュースについて、的川泰宣まとがわやすのりさんが解説するコーナー。毎日小学生新聞で2008年10月から連載れんさい開始。カットのイラストは漫画家まんがか松本零士まつもとれいじさん。

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