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【レビュー】写真展 「138億光年 宇宙の旅 ―驚異の美しさで迫る宇宙観測のフロンティア―」~テクノロジーの進歩に驚き、人智を超えた宇宙の神秘に思いをはせる~ 岡崎市美術博物館で1月8日まで - 読売新聞社

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愛知県の岡崎市美術博物館では、写真展 「138億光年 宇宙の旅 ―驚異の美しさで迫る宇宙観測のフロンティア―」を開催中です。NASAの画像を中心に、惑星探査機や宇宙望遠鏡などがとらえた驚異的で美しい宇宙の写真が展示されており、明かりを落とし順路に工夫をこらした展示室を鑑賞しながら歩いていると、まるで宇宙散歩をしているかのような心持ちになります。

宇宙探査の主役たち――惑星探査機

1969年7月20日、「一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな飛躍だ」と、人類初の月面着陸に成功した米宇宙船アポロ11号の船長、アームストロング氏は言葉を残しました。その後人類は太陽系内の惑星を調査するべく、火星や木星などへ向けて次々と探査機を打ち上げました。特に1977年に発射されたボイジャー1号は、太陽圏を飛び出し恒星間空間へ到達することまで視野に入れており、人類の記録を記した「ゴールド・ディスク」が搭載されていたことで、打ち上げ当時はかなり話題になりました。その後、木星探査機ジュノーや火星探査車キュリオシティなどの活躍によって、太陽系惑星の驚くべき姿が明らかになりつつあります。

人類が初めて月面に降り立った時の足跡の写真。床面に設置されているので、自分の足と並べて記念撮影ができる。

宇宙探査の主役たち――進化目覚ましい望遠鏡

探査機だけではなく、望遠鏡もずいぶん進化しました。ハッブル宇宙望遠鏡は1990年にスペースシャトルによって打ち上げられ、地球を周回しながら観測を続けており、遠い宇宙の姿を捉えてきました。その後継機としてジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が2022年から稼働を開始しており、ハッブル望遠鏡を上回る精度で成果をあげつつあります。また、X線観測衛星や赤外線望遠鏡も目に見えない光や電波を捉えることで重要な役目を果たしています。いっぽう地上ではハワイにある世界最大級のすばる望遠鏡や、南米チリの標高5000メートルの高地に設置された巨大なアルマ電波望遠鏡が宇宙の秘密を探り続けています。

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が捉えた、わし星雲の一部「創造の柱」。 ハッブル宇宙望遠鏡の画像よりさらに細かく数多くの星々を確認できる。 なお、この写真は特殊な素材にプリントされており、岡崎市美術博物館オリジナルの展示写真。

まるでアートのような驚異の天体画像

展示会場には目を見張るような鮮やかさの写真が並びますが、これらの写真は天体望遠鏡が撮影した写真をそのまま使っているのではなく、いくつかの合成過程を経て作られたものです。フィルターを使って光の波長ごとに写真を撮り、後から合成することで色をつけています。また、展示で使用されている写真は銀塩写真です。そのため、大画面でも滑らかで発色が良いのはもちろん、耐光性もあるので比較的強い照明を当てることが可能になり、今回のように宇宙空間をイメージさせる展示が可能になりました。

会場内は照明を落とし、展示品とキャプションのみにスポットライトを当てているので、暗闇に銀河が浮いているように見える。

太陽系

展示は、宇宙から見た地球の姿に始まり、惑星探査機や観測衛星によって観測された太陽系の星々が紹介されています。国際宇宙ステーションなどから見た地球の姿やアポロ計画の月面着陸。かつての生命活動の痕跡等を探る火星探査車キュリオシティ。太陽系最大の惑星である木星の周回軌道に投入された木星探査機ジュノー。土星の大気に突入して20年に及ぶミッションを終えた土星探査機カッシーニ。これらの探査機や観測衛星がとらえた最新の惑星や衛星の姿を、 パノラマ写真などの迫力ある大画面でじっくり見ることができます。

宇宙から見た地球の様子や太陽の姿など
火星探査機キュリオシティが撮影した火星の大地。ダイナミックなパノラマ仕立て。
ジュノー探査機が撮影したさまざまな木星の姿

銀河系

太陽系を離れると、次は銀河系のさまざまな天体を写し出した写真が現れます。太陽のような恒星は銀河系の中に数多く存在し、その数1000億ともいわれます。宇宙空間に漂うガスや塵が集まって生まれた星は、燃料となる水素がつきるまで燃え続け、質量に応じてさまざまな最期を迎えます。宇宙に浮かぶ星雲は、そのような星の生と死に関係したものが多くあります。 このパートでは、恒星の誕生や死に関わる美しい星雲や、あるいは多くの恒星が集まっている星団が紹介されています。

狭い通路をたどっていくと、不意にまるく開けたスペースに出る。壁面には何枚もの美しい星雲の写真、天井には球状星団オメガ・ケンタウリの特大プリント。ベンチが用意されているので、ゆっくりと星々を眺めることができる。
正面上:M16(わし星雲)の一部のクローズアップ。ところどころに大きな垂れ幕タイプのプリントが飾られ、目を引く。

銀河宇宙

1000億もの星が集まって形成される銀河系ですが、同じような存在はこの宇宙の中に無数に存在します。星が集まって銀河を作るように、銀河が集まり銀河団を構成するのです。渦巻銀河や楕円銀河など形もさまざまです。私たちの太陽を含む銀河系は、宇宙に数多ある銀河の一つにすぎません。 さらに目に見えずとも質量を持つダークマターも宇宙には存在します。

互いに影響しあう銀河の姿
右:ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した銀河団の画像にダークマターの分布を重ねたもの。
左:すばる望遠鏡が撮影した画像にダークマターの分布を示したもの。
ダークマターの分布は、銀河団での重力レンズ現象を分析して得られたデータを反映している。

視線を銀河系の外まで向けると、互いに衝突したり変形したりする銀河の姿や、見ることのできないダークマターの存在がわかります。さらに、138億年前に生まれたこの宇宙の黎明期から届いた光さえ検知できるようになりました。夜空に輝く星々は驚きと不思議の世界へと通じています。私たちの体を構成する分子や原子が、この不可思議に満ちた星々の世界の一部だと知る時、敬虔な気持ちが湧いてこないでしょうか。

最新の宇宙探索事情を知りたい人のために

最後のコーナーには、宇宙観測や有人宇宙開発の歩みについて、わかりやすく解説したパネルが展示されています。宇宙散歩を楽しんだ後は、パネルにも目を通してみると、人類の飽くなき挑戦の一端に触れることができ、胸が熱くなるに違いありません。大宇宙の片隅の小さな惑星の上に奇跡的に生まれた小さな存在が、138億年前の宇宙創生の謎に挑もうというのですから。(ライター・岩田なおみ)

138億光年 宇宙の旅 ―驚異の美しさで迫る宇宙観測のフロンティア―
会場:岡崎市美術博物館(〒444-0002 愛知県岡崎市高隆寺町字峠1番地 代表電話 0564-28-5000)
会期:2023年11月19日(日)~2024年1月8日(月・祝)
開館時間:午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
アクセス:名鉄東岡崎駅北口バスのりば2番より【中央総合公園行】に乗車、【美術博物館】下車、徒歩5分。
休館日:月曜日(1月8日(月・祝日)は開館)、12月28日(木)~1月3日(水)
観覧料:一般[高校生以上]1000円(900円)、小中学生 500円(450円)
*( )内は20名以上の団体料金  *未就学児は無料
*岡崎市在住・在学の小中学生は無料(要証明書)
*各種障がい者手帳の交付を受けている方とその介助者1名は無料
*展覧会限定フリーパス「Limi‐pass(リミパス)」は1,500円
*WEB割引あり
主催:岡崎市美術博物館
共催:中日新聞社
監修:渡部潤一(国立天文台 上席教授)
協力:大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 国立天文台、富士フイルム株式会社
企画制作:クレヴィス
企画協力:岡本典明(サイエンスライター)
詳細は岡崎市美術博物館HPへ
https://www.city.okazaki.lg.jp/museum/index.html

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