1号店は1981年オープン
日本の食文化にハンバーガーが定着したのは1970年代のことだ。1970(昭和45)年以降、現在でもおなじみのハンバーガー店の国内1号店が続々とオープンしたのである。
・ドムドムハンバーガー:1970年2月
・マクドナルド:1971年7月
・モスバーガー:1972年3月
・ロッテリア:1972年9月
・ファーストキッチン(現・ウェンディーズ・ファーストキッチン):1977年9月
ハンバーガーはファストフードを代表するメニューとなり、上記のチェーン店、フランチャイズ店は1970年代のうちに全国に拡大していく。多くの人が行き交う駅ビルや駅に隣接した商業施設内にハンバーガー店が営業されるケースも珍しくなかった。しかし、いわゆる“エキナカ”に本格登場したのは1981年のことだ。
これを手掛けたのは、戦前からの歴史を誇る日本食堂である。食堂車、車内販売、駅弁、駅構内の食堂など、旧国鉄の飲食サービスの根幹を任せられることで強固な経営基盤を誇った日本食堂が、新たにハンバーガー事業に乗り出した。駅構内でハンバーガーが食べられる店、その名も
「サンディーヌ」
といった。1981年4月に東京の新橋駅構内に1号店をオープンし、翌月には大阪にも進出。首都圏を中心に徐々に店舗を増やしていったのだ。
現在のJRに比べると旧国鉄はエキナカビジネスに消極的であり、駅構内の店舗数は今では考えられないほどに少なかった。そんな時代に、赤いポップなデザインの看板を掲げたサンディーヌは大いに目を引いた。
一般的なハンバーガー店と同様のメニューのほかに、牛肉とそれ以外の素材をミックスしたハンバーグを用いる「ミックスバーガー」、米を棒状にして揚げた「ライススティック」など独自メニューも用意し、ソフトクリームやフライドチキンを販売する店舗もあった。
旧国鉄の民営化
旧国鉄の分割民営化は、サンディーヌが誕生して6年後のことだ。この大変革により、日本食堂が担っていたJR東日本のエリア以外の業務は、
・ジェイダイナー東海(現・ジェイアール東海パッセンジャーズ)
・にっしょく西日本(現・ジェイアール西日本フードサービスネット)
など、分社化した系列企業に分割されている。
残念ながら、分割民営化はサンディーヌにとって追い風とはならなかった。JR各社はやがてエキナカビジネスに本腰を入れるようになり、駅構内には飲食店に限らずさまざまな店舗が続々とオープンする。
こうして、目立っていたサンディーヌは“ワンオブゼム”になっていく。民営化とともに派手にテレビコマーシャルを放送することもなければ、マクドナルドに比肩する大手チェーン化するようなこともなかった。
ライバルの登場は逆風に
1980年代末期のハンバーガー業界で激化した価格競争も経営面でマイナスに働いた可能性もあるが、サンディーヌがパワーダウンせざるを得ない明確な理由がもうひとつあった。ライバルの登場である。
JR東日本は1990(平成2)年3月に日本食堂に資本参加するとともに、4月には全額出資でジェイアール東日本レストランという競合社を作った。
そして、翌年にはジェイアール東日本レストランがハンバーガー店「Becker’s」を運営する「ベッカーズ」を買収したのだ。つまりは、JR東日本傘下に
「ハンバーガー店がふたつ存在する」
という事態となるのである。
Becker’sはメニューの高級感を打ち出し、クロワッサンで肉や野菜などを挟んだクロワッサンサンドをハンバーガー類と並ぶ看板メニューとするのが特徴だった。また、公式なデータがないものの、改札口の外側のJR関連施設にも積極的に出店していた印象もある。
2000年前後に消滅、カフェは2010年代まで残存
サンディーヌは明らかに先細りしていた。サンディーヌEXPRESSというカフェ形式の飲食店が展開される試みはあったものの、ハンバーガー店としてのサンディーヌは2000年前後にすべて姿を消してしまうのだ。
また、サンディーヌEXPRESSも広域での拡大はならず、最後まで残っていた新小岩駅の店舗も2010年代に幕を閉じている。
なお、ハンバーガー店を運営していたJR東日本系のふたつの企業は近年になり統合したことも確認しておこう。
2020年、サンディーヌを運営していた日本レストランエンタプライズ(1998〈平成10〉年に日本食堂から改称)と、ベッカーズを運営していたジェイアール東日本フードビジネス(2001年に再編によりジェイアール東日本レストランから改称)が合併することで、JR東日本フーズに生まれ変わった。
その後、JR東日本グループはエキナカで事業運営を行う系列企業の再編をさらに推し進めた。2021年にJR東日本リテールネットが、JR東日本フーズなど複数の会社を吸収合併することでJR東日本クロスステーションとなったのである。
残ったBecker's
さて、残ったBecker’sはどうなったか。
2019年までは新規店のオープンもあり、一部にロゴの変更なども見られた。ところが、急激な再編を経て経営方針の変更があったのか、コロナ禍の影響なのか、2020年以降、
・神田
・秋葉原
・飯田橋
・赤羽
・武蔵小杉
・武蔵溝ノ口
・鶴見
・大船
・藤沢
・舞浜
・西船橋
などにあった店舗がバタバタとクローズされていった(順不同)。
2023年5月現在、営業しているのは大宮、柏の2店と、「R・Becker’s」という業態の異なる店舗が池袋にあるのみだ。気がつけばBecker’sの公式サイトは閉鎖され、JR東日本クロスステーションのサイトにもBecker’sの商号の記載されていない。どこをどう見ても撤収モードなのである。
JR東日本系列のハンバーガー店のともしびはこのまま途絶えてしまうのだろうか。
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